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立ち読みコーナー
楽しい鉱物図鑑
堀秀道
ダイアモンド Diamond

Mirnyi,Yakutia,Siberia  ⇔2.5cm 石墨と同じ炭素からできている元素鉱物であるが、真っ黒で軟らかい石墨とはおお違い。同じ元素からできているとは信じられないくらいだ。炭素原子の配列が石墨よりずっと緻密であるため、このような大差が生じる。
 こうした緻密な原子配列は地上の通常の条件ではつくられず、高圧の環境を必要とする。ほとんどのダイアモンドはキンバレー岩と呼ばれる特異な岩石の中で生成される。キンバレー岩は、かんらん石やパイロープを含み、砕かれた岩片が集積している構造をもち、パイプと呼ばれる円筒形の岩体になって、他の岩石中に貫入している。ダイアモンドはこの岩体の中で爆発的な作用が起こった際の高圧により生成されたらしい。
 ダイアモンドの採掘は大量のキンバレー岩を破砕し、その中からダイアモンドの粒を選別するオートメーション機構によっておこなわれているため、母岩に入ったダイアモンドの標本はまず入手できない。そのためキンバレー岩とダイアモンドを人工的に接着した品が出回っている。真正の母岩つきの標本はまれで、写真のシベリア産は、1970年代に少量市場に出たものである。ブラジル産には礫岩中のものがあるが、母岩といってもその中でダイアモンドができたわけではない。
 ダイアモンドは灰色、黒色のものが多く、これらは合成品とともに工業用に使われている。また、黄、紅、紫、緑などの有色石もある。ダイアは日本では発見されていない。

化学組成式:C  結晶系:等軸晶系  外観色および条痕色:無色、灰色、黒色、黄色、ピンク
モース硬度:10  比重:3.51  劈開と裂開:完全(1方向)  結晶の形:正8面体、立方体など
産地名:Kimberley,South Africa/Mirnyi,Yakutia,Siberia/Argyle,Kimberley,Western Australia/Mato Grosso,Brazil


堀秀道
1934年、東京に生まれる。理学博士。鉱物科学研究所所長。著書に『楽しい鉱物図鑑(1)(2)』『楽しい鉱物学』などがある。