草思社

話題の本

このエントリーをはてなブックマークに追加

鉄道開業150周年。電車もいいけど、駅のデザインにも注目してみませんか?

東京の名駅舎
大内田史郎 著 傍島利浩 写真

 皆さんは、電車で目的の駅の改札を出た後に、うしろを振り返ったことがあるでしょうか?
誰もが利用しているのに、普段は見過ごされている駅舎。
しかし、そこには設計者がデザインに託したさまざまな思いや考え方が込められています。
本書は、そんな駅の「建築としてのデザイン」に着目した、ありそうでなかった書籍です。
東京圏の、70以上の駅舎を収録しています。いくつか、登場する駅舎を紹介します。

 まずは、東京の駅といえば東京駅ですが、これは駅舎のカテゴリーに限らず、「様式建築の横綱」と呼ぶことができます。また、同じレトロな建築でも、小湊鐵道のように、壮大なデザインではないけれど、風土にマッチするような佇まいのものもあります。
また、第一線で活躍する安藤忠雄、隈研吾といった建築家たちが、一級の現代建築として設計した、高輪ゲートウェイ駅などの駅舎も収録されています。さらには、竜宮城のような片瀬江ノ島駅、SL機関車の形をした真岡駅など、普通の建物ではありえないような形のものさえも存在しているのが、駅という建築の面白さです。

 駅舎と一口に言っても、そこには非常に豊かな形が存在しています。それは、駅舎の機能が満たされていれば、そのほかは案外自由であるということなのかもしれません。また、形はさまざまに異なっていても、そのまちの歴史や地域性に見事に合うように計画されているという点ではどの駅でも共通しています。駅舎とは、そのまちと鉄道をつなぐ形としてデザインされているのです。
この本を読んだ後は、ぜひ改札を出てから後ろを振り返ってみてください。
そこには、そのまちの名建築としての駅の姿が見えるはずです。

(担当/吉田)

■風格のある様式建築
旧新橋停車場、東京駅、両国駅、旧原宿駅、南甲府駅…

■スタイリッシュな現代建築
高輪ゲートウェイ駅、銀座線渋谷駅、日立駅、上州富岡駅…

■最新の木造駅舎
戸越銀座駅、旗の台駅、参宮橋駅…

■インパクトのある個性的な駅舎
片瀬江ノ島駅、真岡駅、国道駅、土合駅…

帯文:藤森照信

著者紹介

大内田史郎(おおうちだ・しろう)
工学院大学建築学部建築デザイン学科教授 。1974年静岡県生まれ。1999年工学院大学大学院工学研究科修士課程修了、東日本旅客鉄株式会社入社。2001年から2012年まで東京駅丸の内駅舎の保存・復原に携わり、2006年に「東京駅丸ノ内本屋の意匠と技術に関する建築史的研究」にて東京大学大学院から博士(工学)の学位を授与。2014年工学院大学建築学部建築デザイン学科准教授、2020年から現職。一般社団法人DOCOMOMO Japan 理事。著書に『東京建築遺産さんぽ』(エクスナレッジ)、共著に『建築学の広がり』(ユウブックス)がある。

写真家紹介

傍島利浩(そばじま・としひろ)
1965年大阪生まれ。1991年より藤塚光政に師事。1996年よりフリーランス。建築、インテリア、プロダクト、アート、人物を中心とした雑誌、広告、竣工写真などを手がける。1999年、写真展「都市放浪 PART l」(セラトレーディング)開催。2000年、写真展「都市放浪 PART ll」(セラトレーディング)開催。2006年、株式会社プンクトゥム設立。2016年、iPhone写真展「iSnap 4s+6」(ANOTHER FUNCTION)開催。共著に「日本の不思議な建物 101」(エクスナレッジ)、「日本の美しい酒蔵」(エクスナレッジ)、「東京建築遺産さんぽ」(エクスナレッジ)、「奇跡の住宅 旧渡辺甚吉邸と室内装飾」(LIXIL出版)がある。
この本を購入する