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建築が金融に魔改造されるとき、その形に何が起きているのか?
全てのものが金融資本主義に飲み込まれているといっても過言ではないこの時代、建築とは金融商品の最大のものに他なりません。その建築を金融に最適化するとき、その形は極端に歪められています。その結果生まれた建築とはいかなるものなのか。建築家はその現実に対してどのようなスタンスをとるのか。そして実際につくられた建築の形態は、都市や社会の本質に何をもたらしているのか。本書は、金融資本主義と建築のデザインの関係を考察した、画期的な書籍となります。
本書では、特徴的な「金融的建築」のタイプが紹介されます。
・氷山建築
ロンドンで主にみられる、規制が緩い地下に床面積を増大させた、異常な広さを持つ地下室のある住宅。
・ゾンビ建築
投資のみを目的に購入され、実際に住まれることのない「生きていない」マンション。
・極細建築
限られた敷地面積で床面積を最大化するためにフロアを極限まで積んで高層化した、極端に細長いビルやマンション。日本でも「ペンシルビル」として知られる。
・投資マット
都市の周縁部に、中低所得者層を居住させるために設けた広大な住宅地
・スーパー・ポディウム(基壇)
住宅や店舗、教養アメニティなどからなる低層部(台座)のうえに、高層のタワーが載るもの。近年だと麻布台ヒルズなどもこの例の一種と言える。
このような建築のかたちの見方を獲得したあとでは、開発で出来た身近な巨大建築をみる目が変わっていることでしょう。現代の年とは、金融資本の形そのものに他ならないのです。
金融資本主義がはびこる現実に対し、建築家たちは設計においてどのような実践を行うのでしょうか。本書では、ロジャース・スターク・ハーバー・アンド・パートナーズ、ザハ・ハディド・アーキテクツとDOGMAの事例が比較されています。それぞれ、金融商品としての性質を加速しているのか、そのなかで抵抗を試みているのかの差異が見て取れる非常に興味深い分析になっており必見です。
また、本書では金融の先端的な事例として、バーチャル空間の不動産についても考察しています。建築行為が、実物ができる前に絵を描くという「バーチャル性」をそもそももった存在であり、バーチャル投資との親和性が高いことを指摘しています。
すべてが金融商品化している世界で、建築家がとりうる態度として、著者は設計段階から批評的に金融的要素を検討する必要があると指摘します。建築家が構造家やランドスケープデザイナーと協業するのと同じように、金融を創造的行為としてとりいれるべき時が来ているのかもしれません。
(担当/吉田)