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フランス旅行で建築を見ない人はいない。なぜならそれは歴史の証人だから

建築が語るフランスの歴史
デルフィーヌ・ガストン=スローン 著 飯竹恒一 訳
建築が語るフランスの歴史

皆さんは、観光旅行に行くと必ず名所の建築物を見ているのではないでしょうか。それは、名所の建築は歴史的な事件の現場であったり、その土地の象徴であったり、偉人にゆかりのあるものであったりするからなのですが、つまりは建築とは、何よりも歴史を見てきた生き証人に他ならないということです。建物は歴史の舞台だから残され、逆に建物が残るからこそ歴史の舞台になったのだとも言えます。「建築から歴史を見る」。本書は、フランスの30の名所で繰り広げられた歴史を、年表と特徴的な5つの数字とともに語る、新たな視点でおくる「読める」ガイドブックです。
フランスの建物が興味深いのは、作られてから現在に至るまでに、その用途が幾度も変更されているものが多いことだと言えます。また、所有者の交代も非常に多いものが見られます。まさにそこにこそ、歴史のドラマが生まれるのです。それだけ建物を大事に扱ってきているということもできるでしょう。

いくつか具体的な例をご紹介します。

〇モン・サン=ミシェル修道院
この修道院は、夢のお告げがきっかけで建てられたといわれています。その始まりからすでにドラマティックですが、百年戦争の影響は地理的な有利により受けずに済むことができました。しかし、フランス革命からは逃れることができず、監獄にされてしまいます。歴史的記念物に指定されてから、再び修道院に戻る道が拓けました。

〇エリゼ宮
いまでは大統領の象徴といえるこの建物は、はじめはエヴルーという伯爵の邸宅として建てられました。それがポンパドゥール夫人、国王、銀行家、ルイ16世、ブルボン侯爵夫人と、目まぐるしく持ち主が変わっています。侯爵夫人が革命期に独房にいたときには印刷所として使われていた時もあります。その後の紆余曲折を経て、現在のような大統領府になったのは1848年のことです。

ほかにも、アンリ4世やナポレオンとも縁の深い、フランスを代表する建物であるパリのノートルダム大聖堂や、ルソー、ゾラ、マルローなど、そうそうたる人物が眠るパンテオンなど、フランスを語るうえで欠かせない建物が多数掲載されています。

本書を片手にフランス旅行に行けば、建造物を見る視点が変わっている事うけ合いです。

(担当/吉田)

サンプルページ

サンプルページ | パリのノートルダム大聖堂ーー聖母マリアの受難

著者紹介

デルフィーヌ・ガストン=スローン(Delphine Gaston-Sloan)
フリージャーナリスト。アート、文化、歴史、社会問題などについて雑誌へ寄稿しているほか、フランス語や文化を題材にした本の執筆も手がけ、「フランス語表現の理由と方法」(Le Pourquoi et le Comment des expressions françaises)などの著者として知られる。

訳者紹介

飯竹恒一(いいたけ・こういち)
東京大学経済学部卒。朝日新聞社でパリ特派員や英字版記者。早期退職して翻訳者・通訳者へ。パリ時代、歌手のジュリエット・グレコ、シルヴィ・バルタン、ジェーン・バーキン、映画監督のエリック・ロメールらを取材。
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