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香港の自由を「暴力」で守ろうとした若者たちが思いのたけを吐露した貴重な記録!

この本は「逃亡犯条例」の改正に端を発する香港での騒乱(2019年)の際、過激な抗議活動で注目を浴びた「勇武派」と称される若者たちにインタビューしたルポです。当時、抗議デモ参加者の大半は非暴力の抵抗運動で香港の自由を守ろうと考えていましたが、本書で取り上げる若者たちは活動の初期から、中国共産党が背後にいる香港政府と対峙するには市民が覚悟を決め、武装して戦うしかない、という考えをもっていました。黒ずくめの格好で現場に現れ、時に警官に火炎瓶を投げつけたりもしていた彼らはいま海外に逃れ、それぞれに苦難の日々を送っています。本書の著者は志を同じくする香港人として極秘裏に彼らとコンタクトを取り、心のひだにまで入り込むようなインタビューに成功しました。一線を越えて戦った若者たちについて、〈その強さも弱さも、戦術的な賢さも政治的な無知も、格好よさも脆さも、上品でないドロドロした部分も含めて、その実態、行動、思考をあますことなく描いている〉(「解説」より)のがこの本です。
本書をお読みいただければ、香港の若者たちに根づいている本土意識(香港を自らの「ふるさと」と考える意識)の強さに驚かれるのではないかと思います。また、彼らの言葉のところどころに日本文化への親しみが感じられる点にも、ぜひご注目いただきたいと思います。著者も日本の読者に向けた本書冒頭で、こう書いています。〈香港人はつねづね日本への旅行を「里帰り」とふざけて言っているが、それはたんなる戯言ではなく、深い意味が含まれている。……本書の最初の出版が奇跡的に日本に決まったことは、ある意味では「里帰り」とも言える。……日本の友人たちが抱いている勇武派や香港の抵抗闘争に関する疑問に対し、このインタビューにもとづく物語がその回答となり、あわせて彼らが直面している困難と曲折の理解に少しでも役立つことを希望する〉
返還から25周年を迎える香港はいま、ジョージ・オーウェルの『1984』のような超監視社会になり、民主化を支持していた大多数の人たちも「国家安全維持法」が壁となって、声を上げられない状況が続いています。この厳しい状況を打破する方途はなく、負け戦を承知で圧政と戦った若者たちの言葉も、香港がどのような都市であったかを後世の人びとに伝える証言として歴史に刻まれるのかもしれません。しかし香港を飲み込んだ強権統治こそは、現在の日本が直面している巨大な脅威でもあります。そうした観点からも、ぜひお読みいただきたい一冊です。
(担当/碇)
【目次】
日本の読者へ
序文
第1章 懐かしいのはあのときの自分であり、そのとき僕の心の中にいた彼女なんだ
出境したときは二人、戻ったときは一人/七十九日目の挫折/一転、冬眠生活へと堕落/泣きながら彼女を守る/黒衣のブラックユーモア/マスクを外し、はじめて顔を合わせる/五秒の距離/阿呆と鬼/血の債務が民兵を育てる/連合戦線と頓挫した計画/血縁より深い結びつき/あの日の写真/階級の距離/僕にはわからないし、答案も書けない
第2章 私は「何もない」人間なんかじゃなかった
古い音楽、古い映画/催涙弾の中で羊鍋を食べる/裏山での聯校活動/心の傷/MK妹、火炎瓶を作る/香港理工大学での攻防戦/「また誰か、大学から出てきたよ」/うつ病の再発、望郷の思い
第3章 いつの日か、あのヘルメットをとり戻す機会があるよ
火炎瓶を投げる人間とは/単独行動のメリット/八百香港ドルの大冒険/敵の弾が尽きるまで/必要なのは暴動だった/内部での主導権争い/降伏とは言わない降伏/最後の尊厳
第4章 立ち上がった以上、代償を払うことも覚悟しておくべき
覆面をかぶれば別の男になれる/勇武派はいつ生まれたのか/前線でのファッションショー/スパイ扱いで危機一髪/「水になれ」は役に立ったか/涙が涸れれば静かになる/逃れる理由、残る理由/勇気のない人間が爆弾を作る
第5章 曖昧さゆえに、失敗は運命づけられていた
香港の冬はまだ燃えていない/消去された記憶/たいまつは継承される/風雨もなく晴れもなく
第6章 みんなが生きてさえいれば、それで十分だ
剣を振るい、盟約を絶つ/引き金を引く勇気/押収された爆発物/ロマン主義の代償/香港の「法治」への幻想/香港に欠けているもの
第7章 父親には「戦車にひき殺されたいのか」と言われたけど
物資調達グループに参加/三万三千香港ドルを手渡された日/こんな娘を産んだ覚えはない/「暴徒」たちのメッセージ/中国に帰りたい母親/恋は風塵の如く/物資組を再び始動させる
第8章 不満を発散する道が封鎖されたとき、爆発する土壌が形成される
次の「魚蛋革命」を渇望する日々/立法会八階の民建聯オフィス/レンガを投げるのなら前にこい!/危険なリクルート活動/致命的な戦略のミス/自分の過大評価と、敵へ過小評価/拳銃はどこにあるのか/警察による自作自演説をめぐって/もう何も動かせないよ
第9章 なかったふりをすることと、本当に何もなかったこととは違う
排水溝に逃げ込み、一人戦う道を進む/馬鹿野郎、なんであたしの肩を殴ったんだい?/台湾式のプロセス/暴動鎮圧隊にペンキ卵を投げる/階下にイヌがいる/勇武派はマニキュアを塗ってはいけないのか/忘れっぽい香港人
第10章 僕は少数派になることができてうれしいですよ
ヘラジカの沈黙/必要なのは武力/麻袋襲撃を決行/大棠山の都市伝説/可能性A、可能性B