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短歌の読み方がわかる!
本書は明治時代から2023年までに発表された作品の引用と鑑賞を含む、短歌史入門書です。
万葉集から連なる和歌というわが国のもっとも伝統的な表現形態を受け継ぎながらも、おおよそ百二十年前に与謝野鉄幹や正岡子規が先導した短歌革新運動を経て、今日の一大ブームにまで至っているのが短歌です。
この間には「短歌滅亡私論」や「歌の円寂する時」「第二芸術論」といった短歌という芸術形態を否定的に評価する考え方も唱えられました。
しかし黎明期において浪漫主義や写実主義、自然主義といった理想を掲げてシーンを席捲していった天才たちの仕事は、モダニズム、前衛短歌、学園闘争世代の短歌、「女歌」、ライトヴァース、ニューウェーブ、ポストニューウェーブと、時代ごとの社会状況の変化を反映させて、ゼロ年代、テン年代、それ以降と、今日まで途切れることなく更新されてきました。
文学というジャンルのなかでは、小説がもっとも多くの読者を得ているのはたしかでしょう。とは言え、詩歌のなかでは、短歌が特に若者を圧倒的に惹きつける魅力を持つのはなぜなのでしょうか。
期待の新鋭歌人にして評論家である著者による書き下ろしデビュー作が本書です。「短歌史とは秀歌の歴史のこと」だと位置づけているように、豊富な引用はアンソロジーとしても読んでいただけますが、歌人たちがそれぞれの生きる時代のなかで、何を感じ、考え、作品化していったか、表現の根底にひそむ謎の一端が解き明かされる点こそ本書を紐解く醍醐味です。是非ご一読ください。
(担当/渡邉)
内容紹介
前世紀で止まっていた「短歌史」という時計が、
ついに甦った。今が何時か、やっとわかった!――穂村弘
短歌の読み方がわかる!
明治時代からテン年代以降まで、
豊富な秀歌の引用と鑑賞、丁寧な時代背景の解説で、
短歌の流れがおもしろいように理解できる。
短歌史を知ることの何がうれしいのか。短歌史の醍醐味は、過去の短歌の読み方がわかるようになることです。どんな短歌が良いものなのか。それを時代ごとに積み重ねていくと短歌史ができあがります。短歌史とは秀歌の歴史のことです。その時代の色眼鏡をかけてみると、いままでピンとこなかった歌がおもしろく読めるようになるかもしれません。(「はじめに」より)
目次
はじめに
第一部 作品でさかのぼる短歌史
二〇二一年以降の短歌/二〇一〇年代の短歌/二〇〇〇年代の短歌/一九九〇年代の短歌/一九八〇年代の短歌/一九七〇年代の短歌/一九六〇年代の短歌/一九五〇年代の短歌/一九四〇年代の短歌/一九三〇年代の短歌/一九二〇年代の短歌/一九一〇年代の短歌/一九〇〇年代の短歌
第二部 トピックで読み解く短歌史
第一章 明治時代の短歌
短歌革新運動/東京新詩社『明星』の浪漫主義運動/根岸派の写実主義運動とアララギ派/自然主義/短歌滅亡私論
第二章 大正時代の短歌
アララギの乱調子/大正二年の衝撃/大正歌壇の様子/アララギの発展と離反者たち/
女性歌人はどこにいったのか/口語短歌の系譜/『日光』と口語短歌/歌の円寂する時
第三章 昭和の短歌1(~昭和二〇年)
伝統短歌/プロレタリア短歌/定型短歌のモダニズム/自由律短歌のモダニズム/
『新風十人』/戦争と短歌/戦場と軍隊と
第四章 昭和の短歌2(昭和二〇~三〇年代)
終戦直後の歌壇と第二芸術論/『人民短歌』と民衆/戦後派の新歌人集団/女人短歌会・女歌論/前衛短歌運動/六〇年安保と短歌/六〇年代の前衛と戦中派の再評価/戦後の女性歌人
第五章 昭和の短歌3(昭和四〇年代以降)
学園闘争世代の短歌/土俗論・回顧的な七〇年代/「内向の世代」の新人たち/七〇年代「女歌」論リバイバル/八〇年代女性シンポジウムの時代/ライトヴァースと消費社会の短歌/「サラダブーム」と歌壇の動き
第六章 九〇年代~ゼロ年代の短歌
俵万智以降の女歌論/短歌のニューウェーブ/冷戦崩壊前後の短歌と社会詠/ニューウェーブの受容と文体変革/世紀末・歌壇の膨張(ネットや朗読)/ポストニューウェーブと口語の深化/ゼロ年代歌壇の動きと論争/ゼロ年代の総括
第七章 テン年代以降の短歌
東日本大震災後の議論/学生短歌会と世代間の断絶/テン年代前半の歌壇論議/テン年代後半以降のフェミニズム
おわりに