草思社

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欧州→米国→日本の順に経済成長したのはなぜか?

「経済成長」の起源
――豊かな国、停滞する国、貧しい国
マーク・コヤマ 著 ジャレド・ルービン 著 秋山勝 訳

■世界はいつ、なぜ、どのようにして豊かになったのか?

 現代世界は豊かになりました。たしかに、いまだ貧困も戦争も飢餓も存在してはいますが、近代以降、世界の大半の地域が豊かになったのは統計的にみても明確です。
 では、いつ、なぜ、どのようにして豊かになったのでしょうか? これが本書の基本テーマです。以下のようないくつかの要因ごとに、成長をもたらしたものを検証していきます。

地理――幸運な地理的条件はあるのか
・地形、気候、地政学的要因/河川・海洋と輸送インフラ
制度――経済成長は社会制度しだいか
・法制度、政治制度、強権的政府と制限的政府/戦争と国家財政
文化――人を豊かにする文化、貧しくする文化
・宗教、宗教改革、プロテスタントの労働倫理/経済停滞とイスラム教
人口――人口動態と経済成長
・黒死病の影響/世帯形成と西欧的婚姻パターン
植民地⸺植民地と搾取の問題
・奴隷貿易、資源の収奪/公共財と教育システム……ほか

■産業革命を生み出し、持続的な経済成長を可能にしたものとは?

 近代の経済成長の大きな動因となったのは「産業革命」です。ですが、先行して成長していたはずのオランダではなく、なぜイギリスで産業革命がおこったのでしょうか? そしてイギリスがその後も持続的な成長を続けられたのはなぜでしょうか?
イギリスなどの北西ヨーロッパ諸国が最初に豊かになり、それに続いてほかの欧州諸国、アメリカ、そして日本が発展しました。なぜその順番だったのでしょうか? その要因は何でしょう? ソ連、中国はなぜ遅れたのでしょうか? グローバルサウス諸国はいつどのようにして発展しはじめたのでしょうか?
本書は、現代世界の「豊かさ」の多様な状況を生み出した要因を、各分野の最新研究成果をもとにしつつ読み解いていきます。世界史の見え方が変わる一冊です。

(担当/藤田)

[目次]

はじめに

第1章 いつ、なぜ、どのようにして世界は豊かになったのか?
経済成長とは何か?
過去を計測する
本書で学びうるもの
本書で書かれていないこと

第Ⅰ部「世界はどのようにして豊かになったのか?」──この問いをめぐるさまざまな理論

第2章|地理|幸運な地理的条件はあるのか
地理と今日の経済発展
『銃・病原菌・鉄』
山・海岸・気候
地理と輸送インフラ
地理と工業化
本章のまとめ

第3章|制度|経済成長は社会制度しだいか
「制度とは何か?」
財産権
法制度
政治制度
すべての人にもっと平等な権利を
制度と商業革命
ギルド──国家と市場のあいだで
議会と制限的政府
戦争と国家財政
本章のまとめ

第4章|文化|人を豊かにする文化、貧しくする文化
文化とは何か、なぜ文化が重要なのか?
文化でヨーロッパ経済の離陸を説明できるのか?
宗教は経済成長に影響を与えるのか?
何世紀も続く文化の影響
本章のまとめ

第5章|人口|人口動態と経済成長
マルサス的圧力
黒死病
世帯形成と西欧的婚姻パターン
人口動態の変化と近代の経済成長への移行
本章のまとめ

第6章|植民地|植民地と搾取の問題
入植者はどうやって利益を得ていたのか?
奴隷貿易
資源の収奪
植民地主義は希望の兆しを授けていたのか?
本章のまとめ

第Ⅱ部 真っ先に豊かになった国、それに続いた国、そして貧しいままの国──その違いはなぜ生じたのか?

第7章|北西ヨーロッパ|なぜ最初に豊かになれたのか?
地理は制度の発展をどのように方向づけてきたのか?
なぜ中世ヨーロッパ経済は離陸しなかったのか?
離陸直前に起きていた〝小分岐〟
議会と限定的な代議政治の台頭
本章のまとめ

第8章|産業革命|なぜオランダではなくイギリスだったのか
消費者革命
資本主義的農業
イギリスの工業は政治制度で説明できるか?
重商主義と大英帝国
大西洋奴隷貿易でイギリスの工業化は説明できるのか?
産業革命は綿花によって引き起こされたのか?
市場規模が産業革命をもたらしたのか?
国家能力と産業革命
熟練した機械工がもたらした革命だったのか?
革新的な経済
高賃金と「誘発されたイノベーション」
啓蒙主義と経済
本章のまとめ

第9章|工業化|近代経済にいたる道
工業化という果実
第二次産業革命
人口転換
経済成長の不均衡な普及
アメリカはどのようにして豊かになったのか?
ソ連がたどった回り道
本章のまとめ

第10章|後発国|キャッチアップ型成長の前提条件
遅れてしまったキャッチアップ──植民地支配が残した遺産
日本はどのようにして豊かになったのか?
東アジアの四匹の虎
中国はいかにして豊かになったのか?
本章のまとめ

第11章 世界は豊かである

参考文献

著者紹介

マーク・コヤマ(Mark Koyama)
ジョージ・メイソン大学経済学部准教授、マーカタス・センター上級研究員。イギリスで誕生、オックスフォード大学で経済学の博士号を取得。専門は経済史。共著に近世ヨーロッパにおける宗教的寛容の台頭と国家の発展を論じたPersecution and Toleration: The Long Road to Religious Freedom(Cambridge University Press, 2019年)がある。
ジャレド・ルービン(Jared Rubin)
チャップマン大学経済学部教授。専門は経済発展史、宗教学、中東史、制度史。バージニア大学卒業。スタンフォード大学で博士号を取得。政治制度と宗教制度の関係と経済発展におけるそれらの役割に関する研究は多数の主要経済学誌に掲載されている。2017年に刊行されたRulers, Religion, and Riches: Why the West Got Rich and the Middle East Did Not(Cambridge University Press)でLindert-Williamson PrizeおよびDouglass North Best Book Awardを獲得している。

訳者紹介

秋山勝(あきやま・まさる)
翻訳者。立教大学卒。日本文藝家協会会員。訳書にホワイト『ラザルス』、ミシュラ『怒りの時代』、ローズ『エネルギー400年史』、バートレット『操られる民主主義』(以上、草思社)、ウー『巨大企業の呪い』、ウェルシュ『歴史の逆襲』(以上、 朝日新聞出版)など。
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