草思社

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365日続くなんの変哲もない日々!

77歳、喜寿のリアル
――やっぱり昔はよかった!?
勢古浩爾 著
77歳、喜寿のリアル

■「77歳のなんの変哲もない日々」に癒やされる

 数ある老後の不安の中でも、つねに上位に挙げられるのは「孤独」に対する不安ではないでしょうか? とりわけシニア男性にとっては、定年退職後に仲間がいるかいないかは死活問題で、今から積極的に活動しなければと焦っている方も多いかもしれません。
 それに対して、本書はまったく逆のスタンスを取ります。
「はじめに」で著者は潔く、77歳の今、「小中高大のクラスの友人はひとりもいない」と断言します。さらには、「仲間たちとカラオケに行かない、ゲートボール(パターゴルフ)もしない。せっせと食べ歩きをしない。飲み会とやらもしない。そもそも、仲間がいない(中略)しかたないのである。こういうふうに生まれついてしまったのだから」と認め、ひとりで淡々と過ごす老後の暮らしぶりを綴ります。
 著者が(意図せず)実践している、見たいもの、読みたいもの、やりたいことを、マイペースに続ける「77歳のリアルな暮らし」は、不思議と読む側の気持ちをゆるめ、無用な老後不安を消してくれるものとなっています。

■過ぎ去っていった「あの頃の時代」を徹底的に懐かしむ

 この本のもう一つの柱となっているのが、過去と現在との対比です。
 根底にあるのは著者の問題意識、「暮らしは圧倒的に便利になっているはずなのに、なぜか昔に比べて生きにくくなってきているのではないか」というもので、「時代遅れのあの当時のほうが、現在の進んだ時代よりもよかったのではないか」と、自身の少年時代からサラリーマン時代に遡って、今は昔の「あの頃の時代」を徹底的に懐かしみます。
 中には著者の独断と偏見(!?)と言えるものもあるかもしれませんが、昭和100年という節目の今年、昭和を懐かしく感じる世代の人たちにとっても興味深い内容となっていると思います。
 ぜひ多くの方に知っていただければと願っております。

(担当/吉田)

目次より

はじめに

第1章 七十七歳の日々

これが七十七歳のじいさんの日常
ありがたいことにまだすることがある
唯一持っていた自動二輪の免許は返納した
スマホを持っていない人は変人らしい
ニュースなんか見ない
気になるのは血圧と塩分値(CRE値)
まだ自転車に乗れる
喜寿で亡くなった人

第2章 やっぱり働き方は昔がよかった

勤めた会社が零細企業でよかった
電卓、手動タイプライター、FAXが主流だった
和気藹々がまだまだ残っていた
COBOLの日々
じり貧を運命づけられた商売
貧すれば荒ぶ
もう海外(旅行)への憧れは一切ない

第3章 やっぱり人間関係は昔がよかった

わが理想郷――大分県竹田市
昔の学校では、いじめはなかった
いつの間にか屈託を抱えた
好きなことだけやって、自由に生きる
クライマーという生き方
若い人が死んでしまった
懐かしの奈良へ

第4章 やっぱり小説も映画も昔がよかった

わたしが好きな作家は、みんなじいさん
日本には北方謙三がいるが
小説は単純なものでいいのだ――西村京太郎を読んでみた
S・A・コスビーとC・J・ボックス
司馬遼太郎の『街道をゆく』に戻っていく
やっぱり吉本隆明
昔の漫画がまたよかった
映画は現在の勝ち
スポーツは進化するのか?

第5章 やっぱり音楽もテレビも昔がよかった

やっぱりわたしは昭和でできている
唱歌・童謡の名曲がもったいない
わたしが推薦する昔の名曲
今年、私的に大ヒットした曲
傑作はすべてアメリカのテレビドラマだった
テレビはくだらない――小泉今日子
人生に笑いは必要だが、お笑いはいらない
作意のない人間に魅かれる

第6章 やっぱり今がいい

もちろん、現在のほうがいい部分もたくさんある
タバコ、セクハラ、肩もみ
邪魔な社員旅行、酒の強要、お酌
貧すれば鈍した会社
人間は進化しているのか退歩しているのか、わからない
文明は限界に突き当たっている
七十七歳のじいさんの総括

あとがき――今も昔もない

著者紹介

勢古浩爾(せこ・こうじ)
1947年大分県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。洋書輸入会社に34年間勤務ののち、2006年末に退職。市井の人間が生きていくなかで本当に意味のある言葉、心の芯に響く言葉を思考し、静かに表現しつづけている。著書に『定年後のリアル』シリーズ、『結論で読む幸福論』『結論で読む人生論』(いずれも草思社)、『最後の吉本隆明』(筑摩書房)、『定年バカ』(SBクリエイティブ)、『人生の正解』(幻冬舎)、『定年後に見たい映画130本』(平凡社)、『バカ老人たちよ!』(夕日書房)、『無敵の老後』(大和書房)、『おれは老人?』(清流出版)ほか多数。
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